「黒獅子舞」に残された伝説と水との関係
長井の黒獅子舞発祥の由来は諸説あり、元祖といわれる「總宮神社」がある宮地区が、昔から野川の洪水に悩まされた土地だったこと、「卯の花姫伝説」という悲しい龍神伝説が地域に残されていることから、水との関わりが深いとも言われています。そのため黒獅子舞には、上流にいる龍神を一年に一度手厚く招くことで、村を水害から守り、豊作を祈るという村人の切なる思いが込められてきたと伝えられています。
写真提供5点/竹田賢一氏
「むかで獅子」と不思議な動きで龍を表現
龍神を由来とする長井の黒獅子舞には、独自の特徴が見られます。獅子頭の形状が面長で前に突き出た表情であること、長い大幕に20人が入る「むかで獅子」であること、顔を背けて大きく蛇行しながら進むこと、「警護」と呼ばれる者が常に傍で獅子頭の動きをコントロールすること、などです。現在、例祭日などに神社から出た獅子頭は、こうした動きで舞いをしながら町内を練り歩き、人々の厄を払った後、神社へ戻り、奉納されます。
いかめしい顔と予測不可能な動きをとる「むかで獅子」が迫ってくると、その迫力に多くの子どもたちが泣き出します。
写真提供/長井市観光協会