平成15年、鶴岡市の庄内地域産業振興センターは、地域の新しい伝統工芸品の開発を目的に、地元専門家とともに「伝統産業デザイン開発事業」プロジェクトを立ち上げました。企画検討を重ねた結果、地元産業である「松ヶ岡ガラス」と伝統工芸「竹塗漆器」のコラボレーションに着目します。

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竹塗りの新境地に向けて立ち上がった
ふたりの漆器職人
竹塗りを依頼されたのが、竹塗工房「玉明(ぎょくめい)堂」の故・佐藤良一氏と竹塗工房「鈴木」の鈴木勇氏。竹塗りの技術をもつたったふたりの漆師で、どちらも鶴岡市の卓越技能者表彰を受賞しています。「通常、竹塗りは木や金属にしますから、ガラスは初めてでした。だからこそやってみようと思いまして」と佐藤氏。山形県工業技術センター庄内試験場に協力を依頼し、ガラスに漆を塗っては試験場に持っていき、漆の剥がれ具合をテストしました。「カッターで1㎜ずつ刻んだ漆の上に、セロテープを貼って引っ張るんです。それで剥がれなければOKと。2~3年は試行錯誤が続きました」と鈴木氏。こうしてようやく漆のガラス密着技法を確立しました。

竹塗りグラスの写真

ガラスと竹塗りのコラボレーション
竹塗りグラス
その一方で、地元のデザイン会社「はんどれい株式会社」がグラスデザインを始めます。佐藤氏と鈴木氏は、試作品を使って何度も塗り具合を確認し、デザイン会社はそれを元にデザインを決定、「竹塗りグラス」と命名しました。 こうして平成18年、製品化に向けた最後の剥離試験を経て、ようやく完成。庄内地域産業振興センターが音頭をとり、鶴岡の伝統工芸・竹塗漆器と、地元産業の松ヶ岡ガラス、地元デザイン会社がコラボレートした「竹塗りグラス」は、平成19年3月に製品発表が行われました。現在は、独自にさまざまなデザインのビアグラス、ワイングラスなども販売されています。