県の無形文化財に指定された紙漉きの技
深山和紙は楮を原材料としています。
地元素材を有効に使い、漉き上げられる1枚の紙づくりを追いました。

楮の刈り込み作業とふかしの写真
① 楮の刈り取り~楮きざみ
落葉した11月頃に楮を刈り取ります。畑で栽培した楮は太くまっすぐで加工しやすいのが特徴。東北では樹皮に白い虎斑(とらふ)のあるものが多く見られます。刈り取った楮は長さ約80cm程度に切りそろえて小束にし、それを7束一緒に束ねます。

② 楮ふかし
束ねた楮を釜にのせ、桶をかぶせてふかします。1束あたり約2~3時間かかるこの作業の間、職人は火力の調整をしながら薪を燃やし続けます。蒸しあがったら冷水をかけて完全に冷まします。これは、急激に冷やすことで楮の皮をはがしやすくするためです。
楮はぎ作業と楮ねりの写真
③ 楮はぎ~黒皮干し、白皮干し
ふかした楮は1本1本素早く皮をはいでいきます。はぎとった黒皮を小束にして10日ほど干したら、再び水に浸して軟化させ、表皮の黒い部分を取り除きます。その白皮を外に干し、雪にさらすことで自然漂白され、紙の白さが増します。

④ 楮ねり
乾燥した白皮は一昼夜水につけて戻し、ほこりを洗い落とします。楮ねりとは、ソーダ灰を溶かして煮ることで不純物を取り除き、楮を柔らかくする作業です。紙ねり棒で押さえつけながら、焦げついたり噴出したりしないよう2~3時間ほど煮ます。
紙打ちと紙漉き準備の写真
⑤ 紙打ち
楮のぬめりや煮汁を水で洗い流して水を切ります。それを打繊機に入れて、上下を返しながら繊維を打解していきます。この楮をビーターと呼ばれる機械にかけて、繊維を細かくします。そしていよいよ紙漉きの作業にかかります。

⑥ 紙漉き準備
冷水を張った漉舟(すきぶね・水槽のこと)に楮を入れ、布袋に入れた「ニレ(ノリウツギ)」を吊り下げます。ニレは楮の繊維1本1本を分散させる効果を持ち、ノリウツギという木の中皮を使用します。楮と絞ったニレを「紙たて棒」でかき混ぜながら、繊維を分散させ、紙漉の準備が完了します。
紙漉きと紙つけ作業の写真
⑦ 紙漉き~押しかけ
(す)で材料をくみ上げ、簀を縦横に振りながら紙を漉いていきます。漉きあがった紙は、押し板に重ねて置いていきます。押し板に重ねた紙(1日分)はある程度水を切ってから、均等に重しをかけて脱水します。この時、ニレが水と一緒に流れ楮のみが残ります。

⑧ 紙つけ~乾燥
押しかけが済んだら、重ねた紙と紙を1枚1枚はがし、紙板に置きます。皺が出ないように刷毛でなでて張りつけて乾燥し、乾いたものから順にはがして和紙になります。選別して用途別に仕上げたら完成です。
※写真提供/深山和紙センター